太平洋戦争開戦から4ヶ月あまり、連戦連勝の日本に冷水を浴びせたのが「ドゥーリトル空襲」と呼ばれるアメリカ軍の攻撃です。
真珠湾攻撃を受け、フィリピンで敗退しつつあったアメリカは、空母に陸軍の爆撃機を乗せてひそかに日本本土に近づき、東京や川崎、名古屋など大都市を爆撃しました。
日本本土が襲われた初めての空襲です。軍事施設だけでなく学校などが無差別に襲われ、小・中学生も犠牲になりました。東京の各地域でこの空襲を受けた人々の証言で綴る番組です。
証言動画
この空襲を体験した方のインタビューをご覧ください。
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親友の身体に刺さった焼夷弾堀内康男さん
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突然台所で吹き飛ばされた田村正彦さん
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6人の命を奪った突然の空襲田部井武さん
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敵を討つために軍人を目指した尾山令仁さん
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校舎内で体をかすめた機銃弾加藤すゑさん
インタビュー記事
同級生が犠牲に=堀内康男さん
「ここに立ってみると、あのときの状況がぱっと目に浮かんできます。大隈講堂の上すれすれから黒い飛行機が。ちょうどあそこらへんから『サー』って来たのを、覚えていますね」
堀内康男さん(90)。母校である私立早稲田中学校・高等学校(東京都新宿区)の校庭に立ち、細かい描写を織り交ぜながら74年前の体験を振り返った。
「ビラみたいなものを撒いたんですよ。焼夷弾だったと思うんですがね。すごい音で、これはもう直感的に何かくるなって雰囲気があったから、自動的にみんな伏せた。そしたら同時に『ダダーン』って...」
日本本土が初めて狙われた「ドゥーリトル空襲」は真珠湾攻撃の約4カ月後、戦勝ムードに沸く日本にとっては奇襲だった。堀内さんも「当時はいわゆる勝ち戦。国土がやられるということは全く考えていなかった」と語る。
空襲のあった1942年4月18日は土曜日。堀内さんは、受験に向けた補習授業を受けるために登校していた。被害に遭った正午過ぎは、昼休みのため校庭で気の合う仲間らと休憩していた。学校で唯一の犠牲者となった小島茂さんも一緒だった。
「あのあたりに座っていて、私の隣5、6人先に小島がいたんです」。温厚で成績優秀な小島さんは、堀内さんが目標とする同級生の1人だった。
学校が襲われ、とっさに伏せた堀内さんは、小島さんが仰け反って倒れる瞬間を目の当たりにした。「彼の左肩に直撃弾が刺さっちゃったんですね。血がたーっと流れまして。その血を覚えています」
校舎に逃げ込んだ堀内さんらはその後、小島さんが亡くなったことを知らされた。「みんな少年だけど、非常に憤っていましたね。アメリカが良いとか悪いとかじゃなくて、戦争そのものに対して。一般の国民がこういうことになるっていうのはまずいんじゃないかって。勉強そっちのけでしゃべっていましたよ」
「私、一番割り切れなかったのは、そのちょっと前まで(小島さんと)しゃべっていた訳ですよ。進学の話もありますし、よもやま話もあった。それが全然予期しないことで失われた」
戦後も、しばしば小島さんのことを思い返すという堀内さん。「ほとんどの連中は現場にいたが、誰一人けがしなくて。不思議ですよ。だから彼が全て背負ってくれたんだという印象はあるんですよ。そのため、みんな慰霊を尽くそうという気持ちがある」
堀内さんら同級生が中心となり1983年に小島さんを慰霊する礎を学校敷地内に建立した。堀内さんはこの日、改めて礎に深く拝礼した。
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