色彩とともに解き放たれる「記憶」 カラー化写真で見る呉の暮らしと空襲の実像

(元写真提供:朝日新聞社)

戦争の実態を現代に伝える手がかりの1つである「写真」。当時モノクロだったこの写真を、最新のAIテクノロジーと、当事者の記憶を元にカラーで復元する試みが現在、行われています。「過去」を「現在」に引き戻すカラー写真。ここに並べた呉の街並みと空襲のカラー写真は、戦争の気配や記憶をありありと伝えています。

  • カラーで見る呉空襲
  • 呉の街並み 軍港都市の面影 空襲が奪ったもの カラー化写真は記憶のトリガーとなる

記事中の写真をクリックすると、モノクロとカラーを切り替えられます。

呉の街並み

01

四ツ道路交差点周辺の写真
呉市本通の四ツ道路交差点周辺(昭和初めころ)

(元写真提供:朝日新聞社)

02

中通りの夜景の写真
街灯がきれいな中通の夜景(昭和8年ころ)
(元写真提供:朝日新聞社)

軍港都市の面影

03

歓楽街の写真
呉の歓楽街と海軍の水兵(昭和2年)
(元写真提供:朝日新聞社)

04

海兵団の写真
物干場(ぶっかんば)に集まる海兵団の新兵(昭和12年)
(元写真提供:朝日新聞社)

05

海兵団の写真
入浴でくつろぐ呉海兵団の新兵(昭和12年)
(元写真提供:朝日新聞社)

空襲が奪ったもの

06

市街の写真
空襲で燃え盛る呉の市街(昭和20年)
(元写真提供:稲田写場)

07

戦艦榛名の写真
攻撃を受ける戦艦「榛名」(昭和20年)
(U.S. Navy 所蔵)

08

戦艦大和の写真
攻撃を受けて回避運動中の戦艦「大和」(昭和20年)
(U.S. Navy 所蔵)

09

空襲の写真
呉軍港を標的とした空襲(昭和20年)
((U.S.)National Archives 所蔵)

10

海軍工廠跡の写真
空襲で壊滅した呉海軍工廠跡(昭和20年ころ)
(元写真提供:朝日新聞社)

カラー化写真は記憶のトリガーとなる

「記憶の解凍」プロジェクト

上記の写真のカラー化を手がけるのは、広島女学院高校3年生の庭田杏珠さんと、東京大学大学院教授・渡邉英徳さんによる「記憶の解凍」プロジェクト。2年前、広島出身の庭田さんが被爆者の記憶を継承する活動として、渡邉教授の指導を受けながらスタート。AIによる自動彩色と、写真所有者の証言を元に手作業の色補正がなされます。対話を通じて記憶が解凍され、色彩とともに記憶がよみがえります。

  • 渡邉英徳の写真

    渡邉英徳

    1974年、大分県生まれ。東京大学大学院教授。情報デザインとデジタルアーカイブによる記憶の継承のあり方について研究。「ヒロシマ・アーカイブ」「ナガサキ・アーカイブ」などを制作。『データを紡いで社会につなぐ』(2013年)などを執筆。

  • 庭田杏珠の写真

    庭田杏珠

    2001年、広島県生まれ。小学5年生の時、中島地区のことを知り「被爆者の想いの継承」に関心を持つ。広島テレビ新社屋における展覧会、ムービー制作など、アート&テクノロジーを活かした、新しいかたちの記憶の継承に取り組んでいる。

当事者の記憶が写真の色彩を補完する

写真をスキャンしデジタルデータ化。自動カラー化した後に人の手で色補正。
さらに所有者へのヒアリングから、記憶の中の色彩に近づけます。

  1. モノクロ写真

    3タイプのAIを
    組み合わせて色付け。

  2. AIによるカラー化

    AIが付けた色の
    バランスを調整する。

  3. 色のバランス調整

    当時を知る方の意見を
    聞き最終調整。

  4. 聞き取りによる色の調整

(元写真提供:高橋久)

「記憶の解凍」ARアプリ カラー化写真で時を刻み、息づきはじめるヒロシマ Photon,Inc.

  • App Storeからダウンロード
  • Google Playで手に入れよう
広島の写真
(元写真提供:共同通信社)

モノクロからカラーになった写真は生気を取り戻し、半世紀以上前の呉の日常や戦争の有様が、より身近な出来事として鑑賞者に迫ってきます。皆さんはこの写真から、何を感じ取ったでしょうか。

参考文献: 渡邉英徳,庭田杏珠:「記憶の解凍」:カラー化写真をもとにした“フロー”の生成と記憶の継承;
デジタルアーカイブ学会誌 第3巻 第3号,p. 317-323,2019年6月

呉空襲の記憶

  • ・Apple、Appleのロゴ、iPhone、iPadは、米国もしくはその他の国や地域におけるApple Inc.の商標です。App Storeは、Apple Inc.のサービスマークです。
  • ・Google Play および Google Play ロゴは、Google LLC の商標です。